FC2ブログ
カンテレの名曲「夕映えのしずく/Iltakaste Ilomantsissa」(Hannu Syrjälahti)
カンテレの名曲「夕映えのしずく/Iltakaste Ilomantsissa」(Hannu Syrjälahti)

キラキラとした高音が零れるように下降し、ゆっくりとまた上昇し、そして物語が始まっていく-
そんな印象的なイントロから始まる「夕映えのしずく」は、カンテレ小曲の中で最も美しい曲のひとつと言われています。

作曲者のハンヌ・スルヤラハティ(Hannu Syrjälahti)は1950年生まれ、地元の教会の牧師であり、カンテレ奏者、作曲家。彼が1980年代を中心にカンテレ用に作曲した情景的でロマンティックな作品たちは、カンテレを習い始めた人たちの憧れの曲として、また時には試験曲として、プロの奏者たちのアンコール小曲として、今でも愛されています。

ソロで弾かれる機会が多いのですが、もともとは”2台のカンテレのため”の曲。
セカンドパートが加わることにより、冒頭はハーモニクスでより印象的に、中間部では主旋律にそっと寄り添う副旋律がより華やかに曲を盛り立てます。

1978年の初夏、イロマンツィ(Ilomantsi)で行われるカンテレキャンプに講師として呼ばれたスルヤラハティは、ごく自然に自らの内から曲が湧き出るのを感じたと言います。
”嵐が去り窓を開けると、露に濡れた草々の薫りと北カレリアの風景が飛び込んできた”-そうした情景にインスピレーションを得てたった一晩で完成した「夕映えのしずく/Iltakaste Ilomantsissa(直訳:イロマンツィの夜露)」は、彼の初めての作曲作品となり、代表作となりました。
1991年に開催されたカンテレコンクールでは、12~15歳の学生部門での課題曲として選ばれています。

1979年より聖職に就くことが決まっていた彼にとっては、「カンテレ(奏者としての活動)とのしばしの別れと、作曲家としての新たなスタートという想いがこめられた曲」。
なるほど、センチメンタルな感情を思わせる中間部は、カンテレ奏者としての名残惜しさのような感情が反映されているのかもしれません。
その後、冒頭部の繰り返しでは「始まり」と「希望」を感じさせ、新たな門出に立つ彼の姿をも思い起こしてくれます。

イロマンツィはフィンランド南東部、北カレリア、ロシアとの国境沿いに位置する小さな町。
対ロシアとの継続戦争(1941~44年)の最後の大規模戦闘「イロマンツィの戦い」の舞台ともなった地ですが、何より民族叙事詩『カレヴァラ』の詩がもっとも多く採取された地で、今でも町のシンボルとして3つのカンテレが用いられています。
町はずれに佇む"カレヴァラヴィレッジ"は、カレリア地方の伝統を今に伝える、村全体がアートミュージアムのような存在で、夏になると地元の方たちによるカンテレコンサートも催されています。
イロマンツィ・カレヴァラヴィレッジ

カンテレを愛し、カンテレの響きにもっとも気を配り、カンテレの魅力を最大限に活かした曲作りを心がけているスルヤラハティは、現在では「最高のカンテレ作曲者」と言われるほど。

一度耳にしたら忘れられない、何とも言えない美しい響き。
スルヤラハティの音楽の魔法に、きっと皆さんも魅せられることでしょう。

【収録CD例】
・『 Syyspäivänä - On an Autumn Day』(Hannu Syrjälahti),2009,INKOON MUSIIKKI
『Kantele the Old & New』(Martti Pokela),1994,Arc Music
『カンテレ』(はざた 雅子),1999,サンパウロ
・『Finlande - Musiques De Carelie』,2001,Buda Records
『Simple Gifts』(Maine Kanteles),2008, Cd Baby.Com/Indys

>>「About Kantele」【カンテレの名曲】のページに戻る